『宗祖のみ教えを体して』第256世天台座主半田孝淳猊下
『宗祖のみ教えを体して』天台座主猊下
明けましておめでとうございます。
そして本年が皆様方により良い年となりますようお祈り申し上げます。
さて昨秋、比叡山では古儀に則った重要法義、五年一会の法華大会広学竪義が、天皇使もお迎えして粛々と執行され、二百余名の竪者が登山した竪義も魔事無く厳修されましたことに安堵し喜ばしく思っております。
ただ、過ぎし一年を顧みますれば、三月に出来した東日本大震災と、これを原因とする原子力発電所事故は正しく国難というべき大惨事であり、秋には記録的豪雨をもたらした台風災害もあって、数多の尊き人命が失われ、被災された方々は、今もって不安と辛苦の日々を過ごしておられること、誠に心痛む思いをいたしております。
天皇陛下におかせられましては震災直後、国民に「被災者のこれからの苦難の日々を、私たち皆が、様ざまな形で少しでも多く分かち合っていくことが大切であろうと思います」とお言葉を述べられました。
さらに両陛下は精力的に各地へ赴かれ、被災した人々を慰められ,救援活動に従事する方々を労われるなど、そのご活動は多くの人々の心の支え、励ましになっておられます。
この国民を思い、苦難を共にされようとする温かいお気持ちは、我が宗祖大師がお示しになった「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」また「一隅を照らす」の精神にも通底するところと受け止めさせていただき、誠にありがたく、熱い想いを感じさせていただきました。
このような折なればこそ、私ども天台宗、並びに比叡山延暦寺は高祖、宗祖のみ教えを体し、「一隅を照らす」という灯火をより一層高く掲げた諸活動がもとめられております。
本年四月一日には「祖師先徳讃仰大法会」の開闢を迎えるにあたり、私も老骨ながらその先頭に立つことを約し、被災された方々を始めとした全ての人々の安寧ならんことを祈念申し上げて新年のご挨拶といたします