観音さまといえば、聖観音・千手観音・十一面観音・如意輪観音・馬頭観音・不空羂索(ふくうけんじゃく)観音・准胝(じゅんてい)観音の七観音が一般的に有名ですが、それ以外にもマリア観音・慈母(じぼ)観音・悲母(ひぼ)観音・子安(こやす)観音・子育(こそだて)観音など、女性を表わす観音さまもおられます。
昔から柔和(にゅうわ)な顔で人に接している人のことを
「まるで観音さまの生まれ変わりのような人だ」
という例えをすることがあります。
作家の岡本かの子〈芸術家岡本太郎の母〉は、深く観音さまを信仰していたことで有名ですが、その著書「観音経」の中で、
「もし仏教から代表美人を選んで、他教と競技させる催しであったら、ミス仏教となって選手に出られるのは、おそらく観音さまでしょう」
と述べています。
岡本かの子は、おそらく観音さまは女性ではないかと考えていたのではないでしょうか。
しかし、その逆に観音の原語は「アヴァローキタスヴァラ」〈世音を観るの意〉といい、サンスクリット語では男性名詞となっています。
また「観音経」の教えによると、観音さまは出家の姿、在家の姿、天人や龍の姿など男女を問わず三十三のさまざまな姿に身を変え、現世に於いて我々を苦難・厄難から救済して下さると説かれています。
こうみてくると、観音さまは男性でも女性でもないということがおわかりいただけると思います。