天台宗全国一斉托鉢を実施
天台宗では、毎年十二月一日、全国一斉托鉢を実施しているが、昨年も同日に実施された。師走のスタートとなる日の一斉托鉢ということで、今では「師走の風物詩」として定着している。この日を含め、全国各教区で行われた托鉢に寄せられた温かい浄財は、NHKの歳末たすけあい、各地の社会福祉協議会、日本赤十字社、一隅を照らす運動総本部の地球救援募金などを通じて、国内及び、海外の恵まれない方々に贈られた。
昨年で二十二回目を迎えたが、振り返れば、昭和六十一年十二月一日、故山田惠諦天台座主猊下が自ら先頭に立ち、浄財を集められたのが第一回目であった。
宗祖伝教大師の「忘己利他」の精神を実践に移す行動として始められ、その後、一隅を照らす運動の一環として十二月を「地球救援募金強化月間」と定めて活動を拡げるなど、今では、天台宗全体の取り組みとして定着している。また、この一斉托鉢に寄せられる全国の人々の思いや協力も、年を追うごとに大きなものになっている。
同日は、半田孝淳天台座主猊下を先頭に濱中光礼宗務総長、延暦寺一山住職、天台宗務庁役職員など約百名が参加、比叡山麓坂本地区を中心に一斉托鉢を実施した。托鉢は法楽の後、宗祖生誕の地・生源寺を出発、坂本地区の里道を般若心経を唱えながら行脚。道筋の家々の玄関先には既に一行が来るのを待っておられる方々も多く、ねぎらいの言葉とともに貴重な浄財を喜捨されていた。その後、参加者たちはそれぞれ少人数に別れ、坂本地区内を戸別に廻ったり、JRや私鉄の駅前で街頭募金を行い、多くの人々から善意を受け取った。
被災した方々、経済的に困窮している人々。さらには、紛争に巻き込まれ、悲しみの中に沈む国外の人々。こうした方々の苦しみを少しでも分かち合うという意味において、一斉托鉢は御仏のこころを実践する原点となっている。
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曼殊院門跡門主に藤光賢師
天台宗では、昨年十一月二十七日に門跡寺住職推薦委員会を開催、空席となっていた曼殊院門跡(京都市左京区)の門主に藤光賢大僧正(佐賀県神埼郡吉野ヶ里町・金乘院住職)を選出した。
任期は昨年十二月二日より七年。仮入山は十二月十二日に執り行われ、晋山式は今春四月頃の予定である。
曼殊院門跡は、半田孝淳前門主が昨春、第二百五十六世天台座主にご上任されたのに伴い空席となり、これまでは濱中光礼天台宗宗務総長が代務していた。
藤新門主の略歴
昭和七年生まれ。七十五歳。昭和二十五年得度。比叡山高校、大正大学文学部卒。天台仏教青年連盟代表二期、昭和五十四年より、天台宗宗議会議員五期歴任。宗議会副議長、議長を経て、平成九年十二月より同十三年十二月まで宗務総長を一期務めている。
現在は天台宗宗機顧問、一隅を照らす運動顧問、日中友好天台宗協会顧問、天台宗国際平和宗教協力協会顧問などの役職にある。