私たちは毎日の生活の中で人の性質・態度や、物の善し悪しを表現するとき「品性・品格・品」という言葉を使い、「あの人は上品な人だ」「下品な言い方はやめなさい」「下品な色」というように人や物にそなわる様子や風格を表す時には「上品・下品」という言葉を使います。
一般的にこれら上品・下品などいわゆる品について考えるとき、その人にそなわっている人間性や風格の優劣を、また物については出来映えなどを指しますが、これらの言葉は仏教においては別の意味があります。
まず、仏典において「品」には2つの意味があり、一つ目はサンスクリット語vargaの訳で「同類のまとまり、段落」の意。二つ目はサンスクリット語prakaraの訳で「種類」を意味します。
また、大乗仏教経典の一つ『観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)』によると、阿弥陀仏の世界である西方極楽浄土に往生する人を生前に積んだ功徳の違いに応じて9種類に分類しており、これらを総称して「九品(くほん)」と言います。
その九品とは、
上品上生(じょうぼんじょうしょう)三心に象徴される深く往生を願う心を持ち、大乗方等経典を読誦する人。
上品中生(じょうぼんちゅうしょう)大乗方等経典を読誦しなくてもその意味をよく理解し、深く因果を信じ、大乗を誹謗しない人。
上品下生(じょうぼんげしょう) 因果を信じ、大乗を誹謗せず、ひたすらに悟りの道を求める人。
中品上生(ちゅうぼんじょうしょう)五戒・八戒を守り、五逆を行わない人。
中品中生(ちゅうぼんちゅうしょう)一日二十四時間、八戒もしくは沙弥戒(十戒)もしくは具足戒を守り、規律正しい行動が出来る人。
下品上生(げぼんじょうしょう) 大乗方等経典を誹謗しないが、悪業を働き、恥じ入ることのない人。
下品中生(げぼんちゅうしょう) 五戒・八戒および具足戒を犯し、寺院や僧侶のものを盗み、間違った説法をしても恥じ入ることのない人。
下品下生(げぼんげしょう)五逆・十悪、不善を行う人。
以上のように、本来は全く違った意味を持っていた仏教用語の「上品・下品」が、やがて現在私たちが使うような、人の性質・態度、物の善し悪しを表す言葉として定着してきたのです。