(問)お仏壇もそうですが、お寺にお参りしても、お供えしてあるお花は私たちの方を向いています。仏様にお供えするのに、どうして仏様の方にお花が向いていないのですか。
(答)人に花をさしあげるときは、きれいな方を向けて渡しますが、受け取った人は、ありがとうと言って、花を賞(め)でた後、送り主の方に花を向け直します。そうした方が、みんなと花の美しさをわかちあえるからですね。
仏様や墓前に花をお供えする時、「仏さま、ご先祖さま、どうぞこのきれいなお花をお受けください」という心を捧(ささ)げるのですから、気持としては花は向こう向きでしょう。しかし、美しいものを供養(くよう)したいと思うこころを捧げるのと同時に、仏さまや墓所を飾るという意味もあります。そうすると、向こう向きのままでは飾るということにはなりません。
ためしに、一度向こう向きに供えてみてください。なんだか楽屋裏(がくやうら)をのぞいているようで変でしょう。では、こちら向きになおしてみます。やはりこの方がずっときれいで気持ちも落着きます。きれいに飾られると、仏さまの荘厳(そうごん)さもより増すことでしょう。それにお参りする人もきっときれいな気持ちになって、お参りしたという実感がわきます。清々(すがすが)しいこころを仏さまやご先祖さまが受け取ってくださり、その喜ばれたみこころがまたこちらへ伝わって供えた方の喜びになります。行ったり来たりですね。
供える花は私たちのこころそのままです。お仏壇の花がしおれたままなどということがないように心がけましょう。