新しく発心会(ほっしんえ)を展開
天台宗では、昨年から開宗千二百年慶讃大法会にあたり、檀信徒総授戒運動を進めてきたが、このほど各寺院と檀信徒とが、より一層の絆を深めるために「発心会(ほっしんえ)」を積極的に展開することを決めた。
これまで、一部寺院で行われていた、寺院と檀信徒を結ぶ「入檀式」が、それに近い。
この新たな布教教化活動は「帰敬式」という名称でこれまで検討、試みられてきたが、天台宗にはなじみが薄い名称であったため、「発心会」と称することとした。「発心」とは宗祖伝教大師が「道心」といわれた菩提心を発することであり、また、「会」は「式」より形式張らない意味を持たせようとするものである。
いわゆる入信、入檀の意味も持つが、従来行われていた活動と大きく異なるのは、個人が対象という所である。
これまで、宗門での寺と檀家との関係は、多くは寺対家という構図であった。
つまりは、住職と世帯主(戸主という方が分かり易い)との関係が強く、檀家の家族は戸主の後ろに隠れていた感がある。それを住職が個々人のレベルまで踏み込んで、「家の宗教」から「個人の宗教」へ展開しようというのが趣旨である。
伝統宗団では、「個人宗教」への転換を提唱しているところもあるが、天台宗が宗団として打ち出すのは初めて。
発心会のつとめ方と式次第については、原則的に各寺院住職に一任されるが、担当セクションである大法会事務局では、三帰依文、七仏通戒偈、四弘誓願、を中心としたマニュアルを作成している。更に本格的な作法として、一応、洒水やおかみそりも盛り込まれてはいるが、「これらが、必要ない場合もあるだろう」という。
住職と個人とで行う方法もあるし、年回法要など一家族で行う形、あるいは施餓鬼法要を利用して大人数での執行も可能である。
事務局では「いずれにしても、始まったばかり。一朝一夕に出来ることでもない。各寺院で行われた情報は、事務局で把握し、仏教青年会などに協力をお願いしていきたい」と話している。