年少期にこそ、仏の教えを大切に
-伝教大師の精神を現代社会に普及させるために-
昨年十二月に就任した阿純孝天台宗宗務総長は、内局発足後、初の宗議会となる第百十八回通常宗議会(二月二十三日から二十六日)において、内局としての執務方針を明らかにし、現代社会に宗祖伝教大師のご精神を普及させるための諸施策を発表した。
その理由として、企業は競争が激化するため、より合理化せざるを得ず、人間関係においてもその影響を受けざるを得ないこと、また人口が密集した都会では人間関係が希薄で孤独感は深まるばかりであることを挙げ「現代社会の繁栄の裏には暗い虚無の影がひそんでいるといっても過言ではない」と断じた。
人と人とが通じ合うあたたかさがなく、「忘己利他」とはまるで正反対の価値観がはびこっていることに対して、伝教大師の精神を普及すべく力を注ぐと述べた。
そのための人材育成については、得度前育成と得度後加行前育成の二期に分けて考えるが、特に幼少年期を重く見て得度前育成段階で「仏様を身近に感じるようにするためのテキスト作り」を発表した。
具体的には、十三仏の教本が予定されている。十三仏真言、種子の書き方、仏さまの平易な解説に加えて、写仏にも利用できる美しい仏像の線画も加えるとしている。
更に伝教大師のおことばを素読するための教本を作製することも発表。その理由として「素読は幼児期が最もふさわしい」としている。そして、得度後加行までの育成には、仏教漢文演習を行う考えを明らかにした。現在の学校教育は、英語教育に重きが置かれているが、僧侶が読誦する経典は全て漢文であることに鑑み、そのテキスト作りに取り組む。漢文テキストは、子弟のみならず寺庭婦人も共に学ぶことができるため、家庭教育の中で宗教教育ができるメリットもある。
また、来る平成二十五年に迎える「慈覚大師一一五〇年御遠忌」、数年後には「宗祖伝教大師御生誕一二五〇年」並びに「惠心僧都一〇〇〇年御遠忌」が控えている。そのため、全宗徒挙げてそのお徳を称えるために早急に企画すべく委員会を設けるとした。以上の重点施策については、精査のためにしばらく時間を要する関係上、今後の宗議会での予算計上となる。