タイより延暦寺にパーリ語三蔵経寄贈
九月十日、和宗総本山四天王寺(出口順得管長・大阪市)において、「ローマ字版パーリ語三蔵経」がチュラポーン・タイ王女より武覚超延暦寺執行に寄贈された。同経の「シャム文字版三蔵経」が明治二十六(一八九三)年に延暦寺に寄贈されており、今回百十五年振りに新たにローマ字版が寄贈されたことで、今後、関係する学術研究への寄与が期待される。
同王女は贈呈に際し「パーリ語三蔵経は、二千五百年以上保存されてきた人類の悟りの遺産で大切なものです。このローマ字版の出版と贈呈が世界の人々に叡智と幸福、そして繁栄を与える様お祈りいたします」と挨拶を行った。
これに対し、武延暦寺執行が贈呈された側を代表して「このたびの寄贈により仏の教えが世界に広がり、人々の幸福と平和の実現に大きく寄与するものと確信します」と謝意を述べた。
明治期の「シャム文字版三蔵経」は、当時の仏教研究機関五大陸・二百六十カ所に、チュラポーン王女の曾祖父にあたるチュラーロンコーン国王が寄贈している。
同経が散逸してしまっている機関もある中、延暦寺の叡山文庫に収蔵されている同経は、完全な形で残っている。 そのため、同日の贈呈式には、この叡山文庫所蔵のものが展示された。
今回のローマ字版は既に寄贈を受けている所も含め、日本国内十四カ所の仏教研究機関に贈られているが、国外でもインド、スリランカやスウェーデンなどにも寄贈されている。また、コンピュータ時代に対応させて、データベース化もされており、今後の活用が期待されている。
水尾寂芳天台宗教学部長は今回の寄贈に関し「明治期に頂いたシャム文字版が完全な形で残っているのは珍しいと聞いています。叡山文庫には幸い、完全な状態で収蔵されており、今回、それに加えてローマ字版を延暦寺にお贈り頂いたことは、まことに名誉であり、有り難く思っております」と語っている。