天台宗 開宗1200年の御祥当を迎える
伝教大師のみ教えを未来に
守護国界章において宗祖大師は「一切の有情(うじょう)、皆(みな)悉(ことごとく)成仏し、一として成(じょう)ぜざるはなし」と述べられています。法華経からのお言葉でありますが、すべてのものは仏となる、皆と共にその道を歩みたいというのが宗祖大師の願いでありました。
現在の日本社会は非常に病んでおります。開宗千二百年にあたり私たちは、宗祖大師の示されたようにすべてのものが仏となるように精進し、み教えを守り、そのみ心を大事にすることこそが、今の日本を再生させる道であります。
宗祖大師の開かれた比叡山では、法然、親鸞、栄西、道元、日蓮など現在の日本仏教を支える多くの宗派の祖師方が学ばれました。一九八一年に来日されたローマ法王ヨハネ・パウロ二世聖下が、日本の代表的指導者を前に伝教大師のことを「日本仏教の古き指導者」と呼ばれたゆえんであります。仮に宗祖大師が法華一乗のご精神をもって天台宗を開かれなければ、今の日本仏教は全く違っていたでありましょう。
「一隅を照らす」「己を忘れて他を利する」等々、宗祖大師が我々に示された数多くの珠玉の指針がございます。宗祖大師は「わが志を述べよ」とのご遺戒を残されておられます。私たちは開宗千二百年にあたり宗祖大師のお志を伝え続けてゆく固い決意を深く心に刻まなくてはなりません。私たちは、宗祖のみ教えを実践し、弘めることが、何よりの開宗千二百年の報恩行になると存じます。そして、そのことが日本を浄仏国土にする第一歩となり、世界平和への確かな道であると信じます。
文=宗務総長 濱中 光礼