未曾有の大地震が東北、関東を襲う
今こそ、忘己利他の心を被災者へ
三月十一日に発生した国内観測史上最大規模といわれる東北地方太平洋沖地震について、半田孝淳天台座主猊下は、十二日に、犠牲者への哀悼ならびに、被災者へのお見舞いと一日も早い復興を願う諭示を発せられた。また二十九日には、総本山延暦寺阿弥陀堂において、慰霊回向法要が半田座主猊下を導師に、天台宗・延暦寺両内局出仕で営まれ、犠牲になられた人々に哀悼の意が捧げられた。
加えて福島第一原子力発電所が損壊し、放射性物質が漏れ出したために、地域住民の緊急避難という危機的な事態が引き起こされた。
更に被災地では、電気や水道、ガスなどのライフラインの回復が遅れ、避難所では二十万人近くの人々が苦難を余儀なくされている。
天台宗では、地震発生直後から対策本部を設置して情報収集に努めているが、電話等の通信手段が不通となったり、かかりにくくなるなど、思うように現状把握が進んでいない。
天台宗寺院にも多くの被害が出ているとの情報もある。また、檀信徒の被害については、その全貌が明らかになるには相当の日数がかかるものと思われる。太平洋沿岸の福島教区第五部では、津波被害が甚大で、住職全員の無事は確認されたが、一カ寺が完全流失。また、陸奥教区の二カ寺の流失が伝えられている。
なお、十三日に延暦寺西塔・伝教大師ご尊像ご宝前において行われた『世界平和祈願大護摩供』では、半田座主猊下が「日本国史上希有の惨事となりつつある東北地方太平洋沖大地震は人命の犠牲をうみ、心痛のいたり極まりなし。専ら、今、被災犠牲者の冥福を祈るのみ」と祭文の中で述べられ、参加者とともに、黙祷を捧げられている。